スギ花粉はなぜこんなに多い?
花粉症と“植えられた森”の話
春になると多くの人を悩ませる「スギ花粉症」。
自然のことだから仕方ない……と思っているかもしれませんが、私たちが吸い込んでいる花粉との暮らしは、自然発生的に出来上がったものではありません。その背景には戦後の植林政策があると言われています。
本記事ではスギ花粉の特徴と、なぜこれほどスギが多く植えられてきたのか、そしてスギ以外の花粉症の実態までをたどり、花粉と人間の関係を見つめ直したいと思います。
スギの花粉が
人間の脅威となる理由
スギ花粉症は、日本における花粉症のなかでも最も多くの患者数を持つアレルギー疾患です。
天気予報などで知られるウェザーニュース社が、2022年に九州から東北地方のユーザーに行った調査によれば、約半数の人が花粉症であると自覚していることがわかったといいます。なかでも、花粉症の発症率が最も高いのは山梨県の62.3%、次いで2位の静岡県が58.6%、3位が埼玉県で55.7%となっており、一部の県ではゆうに半数を超える人が花粉症に悩まされていることがわかっています。
参考記事:ウェザーニュース『約半数の方が花粉症と自覚 発症率が最も高いのは山梨県』
https://weathernews.jp/s/topics/202203/160055/
スギの花粉は非常に軽く、粒子も小さいため風に乗って数十キロ先まで飛散します。しかも1本の木から放出される花粉の量は非常に多く、春先には空中に大量のスギ花粉が漂います。車のボンネットに黄色い粉のような汚れが付着しているのを見たことがある人もいるでしょう。
また、ヒノキ花粉もスギ花粉と主要な抗原となる物質の構造が似ており、同時期に飛散し、症状が重なるケースも少なくありません。ちなみにヒノキ花粉の色は、スギ花粉と比べると赤みがかった色をしています。
日本の高度経済成長期を支えた
スギの植林政策
多くの人々がスギ花粉に悩まされる原因である大量のスギ。なぜスギは日本の山に大量に存在するのでしょうか。
その理由のひとつが、戦後の植林政策にあります。第二次世界大戦後、国土が荒れ再建が急がれる日本では、住宅やインフラの復興に大量の木材が必要とされました。スギは成長が早く真っ直ぐに育つため、用途も幅広くとても重宝されました。その特徴と需要もあって、スギは政府主導のもとで全国各地に一斉に植林されたのです。
しかし、その後は輸入木材の存在や林業の衰退もあり、日本に多く植えられたスギの森は放置されるようになりました。スギは20~30年生で開花し花粉を飛ばすと言われており、その花粉量は50年生まで伸び続けるとされています。故に花粉症は1970年代からその被害が報告されるようになり、現代に至るまで多くの患者を抱えるアレルギー疾患になりました。 時としてこの折の画一的な政策を咎める声も散見されますが、戦後日本の厳しい状況と復興にかけた想いを鑑みれば、その判断はかなり難しいと言えます。しかしながら、花粉症による多額の治療費、外出を控えることによる経済的損失はかなり大きく、今後の対策は必須と言えるでしょう。
スギだけじゃない!
花粉症大国日本の実情
花粉症の原因はスギだけではありません。すでに取り上げた春先のヒノキ、初夏のイネ科、秋のブタクサやヨモギなど、日本にはさまざまな植物による花粉症があります。それぞれの植物によって飛散時期や花粉の性質が異なるため、症状の出方にも差が出ます。『春先はなんともなかったのに、初夏になって急に鼻水が』という人もいるでしょう。
たとえばスギやヒノキでは、くしゃみや鼻水、目のかゆみが典型的ですが、ブタクサではそれらに加えて、喉の違和感や皮膚症状を訴える人もいます。
近年は複数の花粉に対してアレルギーを持つ人も増えており、『一年中何かしらの花粉症に悩まされている』という声も少なくありません。
地域ごとに飛散する植物の種類も異なるため、周囲の生活環境を知ることと、どの花粉が自分に影響しているかを知ることが、対策の第一歩になります。
ちなみに北海道の森はスギが少ないために、スギ花粉症で困ることはあまりないと思っている人も多いです。しかし、その一方で4月下旬から6月にかけてピークを迎えるシラカバ花粉症が存在しており、やはりスギ花粉症同様に侮ることはできません。
森と花粉症と、
上手に付き合うためにできること

花粉症は、単に体質や免疫反応だけで語れるものではありません。とくにスギ花粉症は、戦後日本の森林政策や林業の現状とも深く関係しており、社会全体の問題であると同時に、後世のためにも対処していく必要があると言えます。
自然と共存するはずの人間が、どのように森と関わってきたのか。その選択が、現代の生活にどんな影響を与えているのか。花粉症に悩まされるこの季節だからこそ、私たちは「目に見えない花粉」の向こうにある背景にも、目を向けてみる必要があるのかもしれません。
花粉症治療は医療機関を受診して判断を仰ぎ、お家ではしっかりと身体をいたわることを忘れずに。
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